「保育間伐」という言葉をご存じですか?
日本に植林されている「スギ」の多くは、
植林してから50年もの年月をかけて、住宅材などで広く利用できる木材に成長します。
良質な木材への成長させるために、
その過程で、様々な作業を施していくのですが
今日は「保育間伐」について紹介します。
*「下刈」については、去年紹介しましたので、そちらでご確認くださいませ。
http://ecoasu.co.jp/eirin/3992.html
真っ直ぐな木材になるよう、植林は「ギュウギュウ詰め」に植えます。
(お隣の苗木が近いほど、上へ上へと伸びていくためです)
そして、植林したスギやヒノキ以外を除去する「下刈」「除伐」を経て
30年ほどで、樹高:10m、胸高直径:20cmを超える木々に成長します。
この段階で、苗木の個体差などによって、「育成不良木」が目立ってきます。
「育成不良木」とは、
・成長が著しく遅かったり
・曲って伸びていたり
・途中で枯れてしまったり・・・
と、このまま残しても良質な木材として活用されない木のこと
また、下にある作業前の写真を見ても分かるように、
木々の成長によって枝葉も広がり、土壌に日光が入らなくなっています。
≪作業前の状況≫
≪作業後の状況≫
「保育間伐」とは、
育成不良木を取り除き、残された木々の枝葉や土壌に日光を当て、
光合成や土壌活性を促すことで、
水や空気をつくり出す森へと育てるために欠かせない作業です。
生命が生きるために、暮らしていくために必要な水と空気をつくり出す結果、
良質な木材へと繋がっていくのです。
極稀に、
「山に伐りっぱなしで勿体ない。」
「せっかく植えたのに、活用しないのはおかしい。」
との声をいただきますが、
馬路村の山々は標高1,000m級であり、林道も十分に整備されているとは言えず、
林道から作業現場まで、1時間以上山道を歩くことがほとんどです。
その状況下で、育成不良木を運び出すだけでの労力や機能がありません。
「細くて短い木は軽いから持てるでしょう。」と言われることもありますが、とんでもありません!!
伐りたての木は水分も大量に含んでいるため、皆さんの思っている以上に重い物体です。
仮に、木材集材架線を張り巡らせたとしても、
近年の木材価格を考えれば、その作業をするだけ赤字が膨らむことは目に見えています。
だから、伐ってお終いの木には「ごめんなさい」としか言えません。
「保育間伐」と言えば聞こえが良いかもしれませんが、林業界では「伐り捨て間伐」とも言います。
山があることで、山師やその家族が暮らせていること
子どもが川で泳ぎ、鮎釣りやウナギ漁ができること
田んぼができること、畑ができること
おいしい空気が吸えること
すべて、暮らしの中では見えない犠牲があることで成り立っています。
植林したすべての苗木が、木材として、命を守る森として、木として華やかな結果が待っているわけではありません。
【良質な木材が生まれるために必要な犠牲】
【生命が生きていくために必要な犠牲】
ただキレイごとだけではない「森づくりの現実」
山への木々への感謝の気持ちを忘れることなく
これからも真摯な気持ちで山と向き合って生きたいと考えています。
≪作業前の状況≫
≪作業後の状況≫