営林の現場から~暑い夏の下刈作業は過酷!!!!~

8月も中盤に差し掛かり、30度を超える暑い日が続いており、
この時期は山で働く人にとって、最も過酷な時期でもあります。

何と言っても山の仕事で最も過酷と言われる「下刈(シタガリ)」があるからです。

「下刈」とは、刈払機や鎌を使って、植林されたスギやヒノキの苗木の成長を妨げる雑草や雑木を刈り払う作業のこと。
写真の上側は、刈り払った後、
写真の下側は、刈り払う前です。
朝靄で分かりにくいかもしれませんが、刈り払った後は、スギ苗がハッキリ見えます。

 

主に、刈り払った雑草が枯れやすい夏時期に
植林されてから5年間ほど作業を行いますが、
日陰の無い現場で、真夏の太陽が照りつける環境ですから、
作業する山師にとっては、地獄のような作業なのです。

そんなわけで、エコアス馬路村の作業班も、
まだ辺りが薄暗い夜明け前に現場へ出発し、
少しでも涼しい時間帯に作業できるように工夫しています。

 

 

さて、近年、林業の後継者不足が顕著な理由として、過酷な作業が原因とも言われています。

その代表が「下刈」です・・・。

知り合いの林業会社社長さんも
「春に入った若い作業員の大半は、夏の下刈で辞めていく・・・。」
と、嘆いています。

「じゃあ涼しい冬場に刈れば?」
と、思うのですが、写真を見ても分かるように、
ひと夏過ぎた雑草や雑木は、スギやヒノキの高さを越えるほど成長してしまいます。
そのため、いざ刈り払う時に、
「どこにスギやヒノキが在るのか?」
見えない状況に陥ってしまい、誤ってスギやヒノキを刈り飛ばしてしまうリスクが高くなるのです。

 

 

林業には昔から作業サイクルがありました。

樹木が地中から水分を吸い上げる春から夏には、
下刈や保育間伐(除間伐)を行い、
成長を妨げる雑草や雑木を枯らせます。

春から夏にかけて伐り出された木材は、
水分を大量に含んでいるため虫が入り、
樹皮も簡単に剥がれて傷が付いしまい、木材価格が下がります。

そのため、木材の伐り出し(間伐や集材)は、
木材が傷みににく、虫も入らない秋から冬にかけて作業を行い、
伐り出した跡地(皆伐や主伐の場合)に、春先までに新しい苗木を植林する。

こうしたサイクルがあって今日の森が作られてきました。

 

しかしながら、伝統だけでは森づくりの担い手を確保することは難しく、
近年では、冬場に下刈を行ってみて
「作業性は向上したか?」「スギやヒノキの成長はどうか?」
といった実験も行われており、私たちも参加してみましたが、
背丈以上に伸びた雑草を刈るのは、なかなか大変だった記憶があります。

8月12日(土)の高知新聞の一面に、


世界的に違法伐採が横行しているとの記事が掲載されていました。

こうして大量に違法伐採された木材が輸入されたことによって国産木材の価格は激減し、
山で働く人の収入減や担い手不足の一端となっています。

また、先般の九州豪雨では大量の木材が流され、
整備の行き届いていない山林から崩壊した立木が被害拡大に繋がりました。

適切な森林整備に投資ができる環境づくりが必要であることが、
目に見えて起きているのです。
今話題?の、森林環境税もこうした分野で活かされることを期待しつつ、
国の規定ではなく、各自治体の実情に合わせて使うことができる仕組みであってほしいと願います。

 

最後になりますが、馬路村の森林面積、高知県の森林面積、日本の森林面積から見れば、
この夏に作業している現場なんてのは、ほんの一部に過ぎません。
現場で汗を流し、次世代へ繋いでいくという想いが、
健全で私たちの暮らしに寄り添う森へと発展してくれると信じて今日も山へ向かいます。

自分たちが植林した小さな苗木が、数年を経て目に見える成長を感じられた時、
それは、我が子の成長にも似た気持ちになります^^

*植林した3年前の苗木(膝丈ぐらいのカワイイ苗木でした)

 

*植林から3年(人の胸ぐらいまで成長しています)