お客様や視察に来られた方からよくある質問の一つ
「架線集材って何???」
山で伐り出された木材を、どうやって地上(林道)まで運んでくるのか???
林道や作業道に近い山であれば、道向けて伐り倒せばOKなのですが、
林道も作業道も通っていない山の上では、「架線集材方式」と呼ばれる作業方法で木を運びます。
今日はその「架線集材」が出来上がるまでをお伝えしたいと思います^^
架線=ワイヤーロープ
つまり、ワイヤーロープを使って木材を運ぶということです。
現場の図面で説明すると、
・緑色で囲んでいる区域が集材区域です。(ちなみに皆伐です)
・赤い線=ワイヤーロープが通るルートです。
・緑区域の赤い線が行きついた場所を「先山」と言います。
・ワイヤーロープを稼働させる集材機は、赤く塗りつぶした部分に設置しています。
・山の図面は、基本的に1/5000を使います。
(上の図面では、約700mスパンの架線を張ることになります)
*どの位置に架線を通すのか?
(集材する木材の状況、架線設備に適した立木の状況、飛んできた木材を造材できるスペースが林道にあるか?)
様々な現地の状況を加味して、架線位置を決定します。
この架線位置で、現場の出来高が決まると言えます。
エコアス馬路村の現場で使用するワイヤーロープは、主に直径12mmのワイヤーロープですが、
地上から山のてっぺんまでの往復分が必要になるため、片道700mだとすれば、1,500m分のワイヤーロープが必要になります。
かと言って、1,500mにもなれば、800kg超える重さになりますので、とても人力で持ち運ぶことはできません。
集材機を使って小さくて軽いロープから順番に入れ替えていくのです。
それでは、最初の工程です。
①簡易飛行機にバインダーロープを取り付けて先山へ飛ばします。
昔は、山のてっぺんまで軽いロープ(リード線と呼ばれています)を持ち上げて、
地上の林道まで引っ張り下りていましたが、現代の林業はそれなりに進化していまして、
飛行機を使ってあっという間に山のてっぺんまでロープを送り届けます。
地上部分(地元と言います)から、先山へ向けて飛行機を飛ばします。
②集材機を使って、ロープを入れ替えます。
飛行機には、2本のバインダーロープを取り付けているので、
地元/先山それぞれ結ぶことで、地元と先山を往復できるロープが出来上がります。
次に、バインダーロープ→ロープ→4mmのワイヤーロープ→12mmのワイヤーロープへと入れ替えます。
③集材搬器を乗せる「本線ワイヤー」を張ります。
木を運ぶ役割を担う「集材搬器」と呼ばれる道具があります。
「集材機」「ワイヤーロープ」「集材搬器」の3つを組み合わせた方式が「架線集材」です。
先の工程で張りあがったワイヤーロープ(12mm)は、集材搬器を前後させる機能を担います。
「本線ワイヤー」は、集材搬器が乗る「レール」の役割を担います。
本線ワイヤーの直径は多様にありますが、架線スパンや木材の径級や長さ、予定材積等に合わせて選びます。
と言っても、1,000円/mを超えるので、だいたい同じ本線を使い回します(笑)
④巻き上げワイヤーを張って完成!!
ここまでの作業で出来上がるのは、集材搬器を稼働させるための機能です。
集材搬器は上空に浮いているため、山で伐り倒した木材を巻き取るために、
集材搬器から山に下りるワイヤーロープ(通称:巻き上げ)が必要になります。
完成を先山から見るとこんな感じです。
⑤いよいよ集材です
強風に煽られたり、下ろしポイントがズレないように「木材を利用したオモリ」を取り付けています。
重量があることで、巻き取るワイヤーが絡まない効果もあります。
集材搬器から下りてきた巻き上げワイヤーと木材を括りつけるのは、「台付け」と呼ばれるワイヤーです。
(もう一体いくつワイヤーがいるが!?と思うぐらいワイヤーの種類がいります・・・)
この台付けワイヤーを木材に括りつけ、巻き上げワイヤーを巻き取ると、木材が空中に浮きあがります。
そして、待ちに待った地上へ送り届けられます^^
標高1,000m級の山々が連なる急峻な馬路村では、
古くから架線集材方式で木材が運び出されてきました。
使う機械や過程は進化し便利になりましたが、安全且つ効率的な工法は変わりません。
日本の林業最盛期には、この架線集材方式を学ぶために、日本各地の山師(林業家)が馬路村に研修に来たそうです。
木が成長し、木材として利用される価値が生まれたとしても、
こうした集材技術が継承されなくては、山の手入れも進まず、山林所有者への利益還元にも繋がりません。
結果、荒廃した山になり、土砂災害や地球温暖化を引き起こす原因になります。
今回皆伐している山も、皆伐完了後に「スギの無花粉苗」を植林します。
スギ=花粉症=天敵というイメージもあるかと思いますが、近年の研究で無花粉苗も量産化されています。
皆伐=生産コストダウン
植林=二酸化炭素吸収力アップ
トータル=山林所有者への利益還元、環境保全
すべてが上手くいく甘い話ではありませんが、
森林面積96%の馬路村がチャレンジすることで、日本の森を考える機会であったり、
林業への議論が深まり、山林所有者を含む、林業に携わる人たちが発展していくことを期待しています。
なお、エコアス馬路村では、山の現場の視察受入れを行っておりますので、
事業の取組や実例、現地の案内等を希望される方は、下記の視察申込ページよりご連絡ください。
http://ecoasu.co.jp/media